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カツラくん 2 〜 LIFE OF WIG 〜

作 編集長



1st Part

ご主人様に捨てられたカツラくんは、まだ旅を続けていた。
ある街を歩いていると、人間とカツラがケンカをしていた。
大勢の人間に蹴り飛ばされてカツラは負けていたが、それでもケンカを止めようとしなかった。
どうやら人間がかぶっていたカツラを引きはがそうとしていたのだ。
カツラくんはケンカを止めに入る。
カツラくんも蹴り飛ばされたりしたが、ケンカは終わり、人間は去っていった。
「どうしてケンカなんかしていたんだい?」
「仲間を集めようとしていたんだ。」
髪の毛が突き立ったカツラは、そう語り、自分の名前は『パンクくん』だと名乗った。
パンクくんはさらに話しを続ける。
彼の言うことには、人間はカツラに対して酷い扱いをしている。
用無しになったカツラは死んでもいないのに、施設に送られ、最終処分される。
最後まで愛され、大切に扱われるのは、ほんの一部のカツラに過ぎない。
そんな身勝手な人間に対して仲間を集めて、抗議するのだとのこと。
パンクくん自身もご主人様に捨てられたこと。
カツラくんは共感し、行動を共にする。

街にはポスターが貼られている。
写っているのは、かつて行動を共にしていた三つ編みカツラの『ミツアミさん』で、現在は、金髪の三つ編み女優カツラとして活躍している。
ケガしたパンクくんは、ポスターを見つめて言う。
「あいつらには俺たちの苦しみはわからねえ!」
カツラくんは、複雑な表情で歩いていく。



2nd Part

ゴミ捨て場に到着する。
そこでは大勢のカツラが集まり話し合っている。
「なぜカツラは生きているにもかかわらず処分されるのか?」
「もともとカツラは人間の髪の毛の細胞から出来ているから、人間なのではないか?」
「カツラに人権は無いのか?」
「なぜ、何のためにカツラは誕生したのか?」
カツラくんが発言する。
「最終処分場に抗議に行くべきだ!」
「それはすでに行ったよ。しかも抗議に行った連中はみんな捕まって処分されてしまった。」
長老のカツラが返答する。
カツラくんが発言する。
「だったら僕たちみたいな不幸なカツラがこれ以上誕生しないように、カツラの生産工場に抗議に行こう!」
「そうか! そうだ! 君の言うことは正しい!」
大勢のカツラは意気盛んになり、早速抗議に行ってしまった。
カツラくんは、ケガしたパンクくんの手当のために残った。

映画のロケ現場。
ミツアミさんが女優と話をしている。
女優はミツアミさんと一生活動したいと告げる。
ミツアミさんは幸せを実感する。
金髪がキラキラと輝く。

数時間後、ゴミ捨て場、髪の毛がチリチリになったカツラが息も絶え絶え戻ってきた。
「仲間は全員、火炎放射器で燃やされてしまった。」
生産工場は、カツラによる同じような妨害を防ぐため、即座に対処するのだ。
悔しがるパンクくん。
カツラくんは、自分の発言により仲間を大勢死なせてしまったことに苦しむ。

映画のロケ現場。
ミツアミさんと女優が新聞を見ている。
「カツラの反乱集団が工場を攻撃ですって・・・恐ろしい。あなたはどう思う?」
女優の問いに対して、ミツアミさんは答えない。

数日後、ゴミ捨て場、パンクくんが提案をする。
「カツラ生産工場にジャンボジェット機を突っ込ませる!」
カツラくんは、飛行場はセキュリティが高く、無理だと反論する。
「いや! 可能だ! パイロットカツラになりすますんだ!」



3rd Part

数日後、飛行場、ジャンボジェット機に搭乗する二人のパイロット、そのカツラはなんと、髪型を変えたパンクくんとカツラくん。
パイロットがいつも使用しているカツラとすり替わったのだ。

ジェット機は飛び立つ。

上空でパンクくんはパイロットに催眠術をかける。
パイロットはパンクくんの言うとおりにカツラ生産工場をめざす。
カツラくんは悩む。
「カツラ生産工場を破壊するのはいいけど、このジェット機に乗っている人々はどうなるんだ? やっぱり止めよう!」
「何だとこの裏切り者!」
カツラくんとパンクくんは操縦席でケンカになる。
目的地が近づいてくる。
パイロットはケンカに巻き込まれて頭を打ち、気絶してしまう。
カツラくんはケンカに負けて外に放り投げられてしまう。
パンクくんは、自分で操縦し、ジェット機を生産工場に突入させようとする。
しかし、操作は上手くいかない。

外に放り投げられたカツラくんは、パラシュートのようにゆっくり落ちていく。
そして遙か彼方でジェット機が落ちてゆくのが見える。
カツラくんは悲しむ。

ジェット機は操縦が上手くいかず、生産工場の隣の工場に落ちていく。
「畜生! 失敗か!」
パンクくんがつぶやく。
ジェット機は隣の工場に突入し、大爆発する。

空を浮遊していたカツラくんは、爆風で吹き飛ばされてしまう。

映画のロケ現場。
突風で女優がかぶっていた帽子が吹き飛ばされてしまう。
風上を見るとそこには巨大なキノコ雲が発生していた。
ジェット機が突入した隣の工場とは、原子力発電所だったのだ。



4th Part

街は逃げまどう人間で大騒ぎになった。
爆発した原子力発電所からは放射能が拡散し、死の灰を降らせている。

女優とミツアミさんは自動車に乗って逃げていた。
ラジオからは、今回の事件の犯人はカツラだというニュースが流れてくる。

カツラくんは呆然として街を歩いた。
逃げまどう人間に踏みつけられても、歩き続ける。
「僕は生きていてはいけないんだ・・・」
カツラくんは、自ら命を絶つために、車道に横たわる。
自動車はカツラくんを轢いていく。
髪の毛が抜けていき、気が遠くなっていく。
髪の毛は半分以上無くなり、意識も無くなった。

女優の乗った自動車がカツラくんを轢く。
ミツアミさんは自動車を止めさせると、女優と別れを告げる。

数時間後、道端、カツラくんが目を覚ます。
「あれ? どうして僕は生きているんだ?」
目の前には、金髪のショートカットカツラがいた。
「君は誰だい?」
「私はミツアミさんよ。久しぶりカツラくん。」
ミツアミさんは、カツラくんを救うため、自分の金髪を切り、カツラくんに植毛したのだった。
鏡を見るとカツラくんは金髪メッシュのカツラになっていた。
ミツアミさんは三つ編みを失い、ショートカットになってしまった。
「君は、女優カツラとして活動しているのに・・・どうして僕のために髪を切ったんだい?」
ミツアミさんは黙っている。
沈黙が続く。
「ありがとう・・・」
カツラくんが感謝する。

二人は道を歩いていく。
「このショートカット、似合っているかしら?」
ミツアミさんが質問する。
「うん、とっても素敵だよ。」
「ありがとう。」
「僕の体の半分は君なんだね。」
二人の会話が続く。

二人の横を高速で走っていくカツラがいる。
パンクくんだ!
驚いたことにパンクくんは、ニコニコしながらカツラくんに近づいてきた。
「おまえのおかげで、予想以上に作戦が成功したよ! 放射能のおかげで人間たちが逃げまどっている。これは俺の望んだ世界だ! しかもコレを見ろよ!」
パンクくんの髪の毛は甲殻類のように硬くなっていた。
「これは進化だ! 細胞の進化だ! 俺たちは新しい人類になるんだ! 放射能で進化できるんだ!」
パンクくんの髪の毛がさらに伸びる。
ニョキニョキと伸びた髪の毛は、束になり、蜘蛛の足のように動いた。
その姿はカツラと言うよりも巨大なサソリのようになっていった。
「じゃあなっ!」
パンクくんは走り去っていった。

夕日が落ちていく。
金髪ショートカットのカツラと金髪メッシュのカツラが寄り添いながら歩いていく。

明日はつづく。



− 完 −



この作品は、出版研究部製作のオリジナルアニメ 『 カツラくん 〜 ADVENTURE OF WIG 〜 』 の続編として編集長が創作したものです。完成された小説でも脚本でもありません。頭の中にはある程度の映像が浮かんでいるので、今から絵コンテを描くぞという前段階のあらすじと思ってください。

2006年8月14日、19時38分

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