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千載一遇
摩訶不思議な物語

作 花林糖

「はぁ〜」
大きなため息。ため息の主は宮野麻里。今年入学したばかりの中1だ。
何故ため息などついてるのかというと、学校で宿題が出たのだ。
しかも麻里の嫌いな作文が・・・。
「大切なものか。たくさんあるよなー。」
大切なもの。それが今回の作文の内容。
大切なものとはいったい何のことなんだろうか。
「えっと 先生は、確かこれは生きていて大切なものって言ってたよね。」
生きていて大切なもの。難しい内容の作文だ。
先生は果たして何を伝えたいのだろう。
この迷路のような複雑な内容の作文に麻里は頭を悩ませていたのだ。
「空気とか簡単な物じゃないよね。だって中学生に出題したんだもん。
 じゃあなんだろう?」
麻里はお手上げの状態になってしまった。
父も母も教えてくれるほど暇な時間は無いだろう。だから
「もう!誰か教えてよ。大切なもの!!」
と叫んでしまった。もちろん叫んだって誰も来るはずない。
しかもだんだん麻里は眠くなってしまった。
もうまぶたが閉じてしまいそうだ。
少しして麻里は寝てしまった。


「ん〜あぁ寝ちゃった。あれ?」
麻里が起きた。しかし起きた所はさっきいた所ではなかった。
この世のものとは思えないほど美しい花や
見たこともない面白い草が生えてたり
確実に毒のありそうな色のキノコが生えてたり。
怖いようなでも楽しいような不思議な所にいた。
「なによここ・・・。どこ?。」
麻里はおどろいた。起きたら知らない所にいたのだから。
そしておどろきは不安へと変わった。
自分の家に帰れるのかどうか心配になったのだ。
「でも、あわてたらダメよね。まずここがどこなのか考えなきゃ。」
ぐるりと周りを見回した。木がたくさんあることから考えて森のようだ
ここは日本なのだろうか。周りを見て考えると日本ではないようだ。
「アー!!どっどうしよう。ここが日本じゃなっかったら日本語が通じないよ。
そうだ英語。学校とかで習ったもんね。
 えっと ディス イズ ア ペン!あとはなんだっけ?」
とにかく麻里は落ち着くことにした。自分にしか頼れないのだから。
またここがどこなのか考えることにした。
「なんだか ファンタジーの世界みたい。
 もう考えるのやめた。行動あるのみ!」
しかたなく森を歩いて行くことにした。

 麻里は森を歩いて行けば誰かに会えるはずと思ったのだろう。
しかしそんなに簡単に人に会えるだろうか。
初めは麻里も明るかった。ファンタジーの世界に行ってみたっかたからだ。
ここには冒険したくなるような不思議な感じがするのだ。
しかしその感じは長くはもたなかった。
いくら歩いてもずっと道が続いてるのだ。まるで天まで続くように。
「もう疲れたよー。どこまで続いてんだよー。この道。」
麻里はもうヘトヘトになってしまった。
もう一歩も歩けないと麻里が思った時。
「クスッ クスクス。」
笑い声が聞こえた。人のようだ。麻里は疲れが吹っ飛んだ。
人がいるかもしれないのだから。麻里はものすごい勢いで走り出した。
「まっ待って!!」
息を切らしながら麻里は叫んだ。
「何急いでるの?」
少年のような声がした。声のする方向に麻里は振り向いた。
木の上に人が座っていた。身長から考えて子供だろう。
けれど少年だか少女だか分からなかった。
少年にも少女にもどっちにも見えるのだ。
「ねぇ ここはどこ? どうしたら私の家に帰れるの?」
いきなり風がふぁっと吹き、木から人が降りてきた。
「そんな慌てないで。僕はリオン。君は?」
慌てないでといわれてもそんなに簡単に落ち着けない。
けれどリオンの笑顔を見ると何故か落ち着くのだ。
「私は宮野麻里。ここはどこなの。」
空を見上げリオンはゆっくり話し始めた。

「ここは教えてほしいとか知りたいとか思うとここに来ることが出来るんだ。
 そしてその事を知ることが出来るんだ。
 教えてほしいことが犯罪とか悪いことだと来れない。
 綺麗な心の持ち主だけがここに来れるんだ。」
つまり簡単に言うとファンタジーの世界なのねと麻里は思った。
「どうやったら私の世界に戻れるの?」
クス クスとまたリオンが笑った。
麻里はバカにされてるようでムカッとなった。
「ごめん!笑ったりして。でも帰るのはとっても簡単だよ。
 教えてほしい事がわかればいいんだ。」
「じゃあ リオン大切なものってなんだか教えて。」
リオンは少し困ったような顔をした。
「教えてほしい事は自分でこの世界を冒険して
その答えが分かったら戻れるんだ。」
それじゃあ ここに来た意味あるの?
家で考えても同じじゃん。麻里はため息をつき思った。
「でも。冒険していけば助っ人がいるから。だからきっと分かるよ。」
いくら助っ人がいてもな〜。
でも行かないと帰れないんだし行くかと麻里は思った。
「分かった。行くよ。冒険に!でもどこに行ったらいいの?」
麻里は少し心配しながら言った。リオンは左の方を指した。
「こっちの方へずっとまっすぐに進めばいいんだよ。大丈夫。
 絶対迷わないから。
 そうだ!もしどうしても分からない事や困った時は僕を呼んで。
君が念じれば君の所へ行けるから。」

 そう言ったとたん風がふぁっ吹いてリオンは消えてしまった。
そしてまた麻里は独りぼっちになってしまった。
「よし!今度は帰る方法が分かったもんね。
こっちをずっと行けばいいんだよね。」
麻里は元気を出し歩いていった。

 どうして絶対迷わないと言い切れるんだろうと麻里が思った時。
目の前にはきれいなレンガの道が続いていた。ここを歩けと言ってるように。
その道を麻里はどんどん歩き進んで行くにつれ、だんだん日が沈んできた。
「はぁ〜。もう暗くなってきたな。今日は野宿になちゃうな。」
麻里は近くの木に実っている果実を取って食べることにした。
「毒・・・入ってないかな。
 でもここがファンタジーの世界なら人死なないよね。」
きっと麻里はファンタジー=人は死なない。とでも思ってるのだろう。
しかしファンタジーの中には人が死ぬ話もある。
麻里はそんな話は麻里は知らないのだろう。
幸いその果実には毒が入っていなかったようだ。
そして平らな所を見つけて麻里は眠ることにした。


 そして次の日。また木になってる果実を食べて歩きだした。
休み休みゆっくりと道に沿って歩いて行った。
辺りはいくら歩いてもほとんど景色が変わらなかった。
もうお昼近くになったと思われた時、家らしき物が見えた。
「やったー!!」
麻里は叫んでその家にむかって小走りで走っていった。
しかし近くにありそうでその家は遠かった。
もう麻里はゆっくり歩いていた。
その家を見つけてから1時間くらい経った時やっと家の扉が見えた。
そして麻里はまた走り出した。
「うぁ〜大きい〜。お城みたい。」
その家はとにかくすごく大きいかった。麻里の言うように城のようだった。
しかし造りなどは家のようだった。こんな家は日本中であるだろか。
大きくてそしてすごく美しい。白い壁でその壁が輝いている。
麻里は扉の近くへ行きそばにあるベル鳴らした。
ここにいる人がリオンの言ってた助っ人だと思って。
「どなた?」
中から若い女の人が出てきた。メイド服を着てることから使用人なのだろう。
「いや・・・。あのお話を伺いたくて。」
麻里は慌ててそう言った。女の人は麻里を変な目で見ていた。
「そうですか。婦人にお会いになるか聞いてきます。
 少々お待ち下さい。」
麻里はふぅと息を吐いた。
「あの女の人私の事変な風に見てたな。
 いきなり知らない人が訪ねてきても中に入れてくれないよね。」
女の人が中に入ってから5分くらいが経った。
扉が開き中から前と同じ女の人が出てきた。
「婦人は話を伺うそうです。どうぞ中へ。」
麻里は驚いた。あんな変な事を言ったのだから入れないと思っていたのだ。
中は光り輝いていた。天井にはシャンデリアがあり、彫刻や絵が飾ってある。
廊下にはカーペットが敷いてあった。
豪邸その言葉はこの家のためにある。そう言われてもうなずいてしまう
そんな雰囲気が流れていた。
女の人は一つの部屋の前で止まった。
「ここに婦人がおります。」

 麻里は中に入った。どうやらリビングルームのようだ。
中には優しそうなおばさんがソファーに座っていた。
「そんな離れなくても。こちらにお掛けになって。」
麻里はその人とテーブルを挟んで反対側のソファーに座った。
そのソファーは、すごくふかふかで上手に座らないと
埋もれてしまいそうだった。
「えっと 私は宮野麻里といいます。」
「そう。私はマーブルというの。一人でお話相手が欲しかったの。
 それで聞きたいことはなに。」
麻里はすごく緊張していた。知らない大人の人と話をするはほとんどない。
しかもお金持ちで自分と身分が違いすぎる人とは始めて話すのだ。
「あのマーブルさんは大切なものって何だと思いますか?」
こんな事聞かれるとは思いも寄らなかったのかマーブル婦人は
驚きの表情を浮かべていた。
「そうね・・・。お金かしら。」
「おっお金。」
確かにそうだけどそんなので良いのかなと麻里は思った。
「だってお金があればなんでも買えるじゃない。
 きれいな服や宝石。おいしい食べ物だって。」
麻里はそうだよねと思った。
大切なものが分かり麻里は満面の笑みを浮かべた。
「ありがとうございました。これで大切なものが何なのか分かりました。」

 麻里はマーブル婦人にそう言って帰ろうとした。その時
「あら もう帰るの?もっとお話したいわ。」
マーブル婦人に止められてしまった。
まぁ自分の話も聞いてもらったしと麻里は思い
もう少しここにいることにした。
そしてマーブル婦人は愚痴やら色々なことを話した。
しかし麻里ははぁと相づちを打つしか出来なかった。
途中に食事をとりながら二人は長々と話していた。
数時間経っただろうか。とうとう麻里は帰りたくなった。
「あの・・・もう帰らしていただいて宜しいでしょうか。」
マーブル婦人は残念そうな顔をした。
「そうね。分かったわ。とても楽しかったわ。麻里さん。」
そして使用人に扉まで案内してもらい麻里は外へ出た。

 マーブル婦人の家から少し歩いた所で
「分かったよ。大切なものってお金でしょ。
 だから私を家に戻して。」
と空に叫んだ。
そうしたら麻里は家に戻れると思ったのだ。
しかしなにも起こらなかった。
でも大切なものってお金じゃないのと麻里は思った。
麻里は泣きそうになった。大切なものが分かっても戻れないのだから。
「そうだ!リオンに聞けばいいんだ。」
そう言って麻里は強く念じた。リオンここに来てお願い!と。
しかし少ししてもリオンは来なかった。
「そんなことしたって来るわけないよね。」
そうあきらめてた時ふぁっときゅうに風が吹いた。
麻里は目を閉じた。そして麻里が目を開いた時そこにはリオンがいた。

 はぁ〜と麻里はかたをなで下ろした。
そして心配の気持ちがきれいに無くなった。
「あのね。大切なものが分かっても家に帰れないの。」
麻里は落ち着いて聞いてみた。
「そう。君は何が大切なものだと思うの。」
「えっ。お金よ。お金。」
リオンが少し悲しそうな表情を浮かべた。
麻里にはなぜリオンがこんな表情を浮かべているのか分からなかった。
「本当に大切なものがお金だと思うの?」
麻里は驚いた。大切なものはお金だと思って
マーブル婦人が言ったことをリオンに言った。
「だってお金があればなんでも買えるじゃない。
きれいな服や宝石。おいしい食べ物だって。」
はぁとリオンはため息をついた。そして悲しそうな表情をして言った。
「本当にそう思うの?お金持ちになって
 本当にそうなのか考えて見るといいよ。」
そう言ってリオンはパチンと指を鳴らした。
すると麻里は急に眠くなってしまった。  
そしてついに寝てしまった。


 麻里は目を開けた。 そこは森の中ではなく大きなベットの上にいた。
「えっここどこ?リオンがお金持ちにって・・・」
そんなわけないと麻里は思った。 
しかしここはファンタジーの世界。なんでもありなのだ。
部屋を見回すとマーブル婦人の家のような雰囲気だった。
ホテルのスイートルームンのような部屋だった。
部屋のドアをが開き人が入ってきた。
どうやら使用人のようだ。
「麻里お嬢様。お目覚めですか。もうすぐ朝食の用意が出来ます。
 それまでに服をお着替えください。」
麻里は吹きだしそうになった。
生まれて一度もお嬢様などと呼ばれたことがなかったからだ。
それに自分は全然お嬢様なんて柄じゃないからだ。
「分かった。ありがとう。」
麻里は素直にお礼を言った。
すると使用人は驚いて
「お嬢様はありがとうなど言わなくてよいのです。
 ただうなずけばいいのです。」
コクンと麻里はうなずいた。
でも麻里はお礼を言ったほうがいいなと思った。
使用人はまもなく部屋を出て行った。
「はぁ〜堅苦しくてやな感じ。そうだ着替えなきゃ。」
麻里はどこにクローゼットがあるか探してみた。
この部屋全体の壁がなんとクローゼットになっていた。
そしてクローゼットを開けると
「うわ〜 服がいっぱい。お店みたい。」
中には高そうな服や、ドレス、色々な服が綺麗に並んでいた。
ほかにもアクセサリーや靴もたくさんあった。
「どの服にしよう。いっぱいあり過ぎて選べないよ。」
麻里は鼻歌を歌いながら楽しそうに服を選んでいた。
とうとう一つの服に決めて、その服を着てみた。
「すごーい。こんな服着たことないよ♪」
麻里は鏡の前でモデルのようにポーズをとっていた。
この世界に来て一番楽しいと麻里は思った。
「コンコン」
ドアをたたく音がした。朝食の用意が出来たのかと麻里は思った。
「朝食のご用意が出来ました。」
さっきの使用人の声がした。
麻里はドアを開け部屋から出た。

 部屋の外も豪華だった。
使用人は歩きだし麻里はその人について行った。
そして使用人は一つのドアの前で止まりドアを開けた。
「どうぞ。」
そう言われ麻里は中へ入ってみた。
中には長いテーブルがありイスが一つあった。
そして周りにはたくさんの人が立っていた。
服から見て使用人なのだろう。
「どうぞこちらへ。」
使用人がそういってイスを引いた。
麻里はそのイスに座った。目の前のテーブルには朝食が並んでいた。
朝食と言っても、ものすごく種類があり、量もたくさんあった。
でも麻里は食欲がわかなかった。
パンとおかずを少し食べて席を立った。
麻里は少食な方ではないのだが食べられなかった。

 そして部屋に戻った。
「なんだろう。なにか大切なものが足りない。」
麻里は言ったものの何が足りないのか分からなかった。
でもお金も、おいしい食事も、あるんだから
足りないものなんてないよね・・・と麻里は思った。
部屋には自分だけ。ものすごくしーんとしていた。
たくさんの人がいるのだけど自分だけのような気がした。
麻里はクローゼットを開け、また服を選ぶことにした。
鏡の前で服を合わしている。
鏡に映っている自分の顔はすごく悲しそうな顔をしていた。
「なんで私こんな悲しい顔してるんだろう。
 ここにはなんでもあるのに。」
麻里は服を選ぶのをやめた。ベッドの上に寝転がった。
ふぅと深呼吸をして落ち着くことにした。
麻里は悲しくなった。
そして涙がポロッとこぼれた。
「いくらお金があっても楽しくないよ。
悲しいだけだよ。」
麻里はポロポロと涙をこぼした。
お金があっても独りぼっち。
独りぼっちはすごく悲しいよと麻里は思った。
「戻りたい。お金なんて大切なものじゃない。」
涙をぬぐいながら麻里は言った。

 すると風が吹きリオンが現れた。
そして周りは、真っ白な世界になっていた。
「リオンお金なんて大切なものじゃないよ。」
しっかりとした口調で麻里は言った。
「でも君はお金があればなんでも買えるって言ったじゃないか。」
リオンがそんな事言うなんて思わなかった。
麻里はその事を思い出し悲しくなった。
「でも・・・お金があっても悲しいだけなんだもん。
それに独りぼっちなんだもん。」
麻里は大きな声で叫んだ。リオンはまた質問してきた
「でも、たくさん人はいるじゃないか。」
「そうじゃないの。家族とかなんて言ったらいいの分からないけど
 もっと楽しく話せる人がいないの。」
リオンはクスッと笑って、分かったという顔をして
指をパチンと鳴らした。
すると目の前が真っ暗になった。
次に明るくなった時にはリオンはいなくなり、麻里は森にいた。


「本当に戻れるのかなぁ〜。」
麻里は少し心配になってきた。
さっきの答えがちがてったかずっと落ち込んでるのだ。
「落ち込んでてもしかない! 
 歌でも歌ったら明るくなるはず。」
そう言って、麻里は歌を歌いながら道を歩いて行くことにした。
歩くスピードはいつもと変わらないのだが
麻里はいつもより速く歩いているような気がした。
「グゥ〜」
おなかの虫がなった。
麻里はお昼を食べることにした。
そして木になっている実を食べた。
一休みしてからまた歩き出した。
今度も歌を歌いながら歩いている。

 お昼を食べて1〜2時間くらい歩いていると
遠くから歌声が聞こえてきた。
麻里はその歌声が聞こえる方へ歩いていくことにした。
初めのうちは小さな声で何を歌っているのか
分からなかったが歩いていくにつれて声は大きくなり
何を歌っているのかがだんだんに分かった。
歌は子供が数名で歌っているようで時々笑い声も聞こえる。
やがてはっきりとその歌声が聞こえてきた。
その歌はとてもおかしな歌詞でしかもリズムもおかしい。
歌っている子供たちが考えたのだろう。
そのおかしな歌はこんな歌なのだ。

     「おんぼろジプシーやって来たぁ〜。
      幌馬車乗ってやって来たぁ〜
      きれいな服もおいしい食べ物も
      なんにもなんにもないけれど
      楽しく楽しくやってるよぉ〜♪」

おかしな曲ねと麻里は思った。でもとっても楽しそうとも思った。
そして少し歩くと幌馬車が3台ほど見えた。
そこには子供がいてさっきの歌を歌っていた。
麻里はその子供たちと話してみたくなった。
そして麻里が近づいてくると子供たちが麻里のそばに寄って来た。
子供たちは麻里よりも少し幼い。
なにより服はつぎはぎだらけでボロボロで髪もボサボサだった。
それに子供たちはそこらじゅうに泥がついている。
本当に汚らしくて普通の人なら話すなんてしないだろう。
けれど子供たちの瞳は好奇心が満ち溢れていて
宝石のようにキラキラ輝いていた。
「君だれ?」
その子供たちの一人が聞いてきた。その子は男の子だった。
「私は宮野麻里。ねぇあなたたちは自分たちだけで暮らしているの?」
一番初めに話し掛けた男の子が答えた。
「おいらたちだけじゃないよ。ちゃんとお父さんやお母さんはいるよ。
 でも今は出かけているだ。
 そんでおいらの名前はロゼフって言うんだ。」
ロゼフのとなりの子も話始めた。
「あたしの名前はシュリア。」
「ぼくの名前はキアだよ。」
「わたしの名前はケイトです。」
みんなまだ自分よりずいぶん幼いのにしっかりしていた。
キアがあっとなにかを思い出した。
「そうだ。大切な仲間を忘れてた。」
そしてキアは口笛を吹いた。ほかの子供たちも一緒に口笛を吹いた。
すると幌馬車の中や森から動物が出てきた。
サル、小鳥、リス、猫が一匹ずついる。
「ぼくたちの仲間なんだ。」
仲間?ペットじゃないのと麻里は思ったが
子供たちと動物たちを見ていると
ペットと飼い主という関係には思えなかった。
友達や家族そんな関係に麻里は見えた。
「サルの名前はスイ。小鳥の名前はクウ。
 リスの名前はセイ。猫の名前はリョクって言うんだ。」
シュリアが説明してくれた。この動物たちは野生の動物のようだ。
野生の動物は普通は警戒心が強く人にあまりなつかないのだが
この動物たちは本当によく子供たちになついていた。
「そうだ。麻里お姉ちゃんはどこへ行くの?」
ケイトが聞いてきた。麻里はこんな小さな子供たちに分かるわけない
と思ったがもしかしたらと思い話してみた。
「大切なものがなんなのか知るため私は冒険してるの。
 あなたたちは大切なものは何だと思う?」
子供たちはそう聞かれて考えこんでしまった。
麻里は聞かないほうが良かったと反省した。
「わたしはみんなが大切なんだけどな。」
ケイトがボソッと言った。
「みんな・・・?」

 麻里はなんなのか分からなかった。
ケイトはそれを感じたらしく説明してくれた。
「みんな。そうロゼフやシュリアやキアや麻里お姉ちゃん。
 だって独りぼっちていやだから。だから大切だと思うんだ。」
「あたしもそう思う。だって迷子になった時独りぼっちで
 悲しくて。それでみんなが来た時すごっくうれしかったもん。」
シュリアがそう言った。子供たちもうなずいた。
でも麻里は分からなかった。そんなものが大切なものなのかと。
「そうだね。みんなって言うより仲間が大切なんじゃない。」
ロゼフが噛み砕いて説明してくれた。
麻里はピンとこなかった。仲間なんていなくたって・・・
だから大切なものじゃないよと思った。
もう子供たちに聞いても分からないと思い帰ることにした。
「うん。分かった。私はもう帰るから。」
すると子供たちは走って幌馬車の中に入って何かを持ってきた。
「はい。これあげる。友達の印。」
代表してキアが渡した。みんなもうなずいている。
それはきれいな石だった。
麻里はその石をポケットにしまった。そして子供たちと別れた。


 前のように麻里は道をまっすぐに歩いていく。
「仲間なんて。それが大切なものなわけないじゃん。」
また違う答えを見つけないとな〜
仲間なんてそんな答えは簡単じゃない。
あんな小さな子供たちに聞いたのが間違いだったな。
麻里は反省した。
仲間なんてそんなのは答えじゃない、そう思った時
フッと始めてこの世界に来た時のことを思い出した。
お金持ちになった時も思い出した。
一人で悲しくて仲間がほしいと思ったことを。
でもそんな分けないと麻里は思った。
私よりも小さな子供たちが答えが分かるわけないと思った。
麻里は自分の気持ちを抑えているのだ。
「でもやっぱり大切なものって仲間じゃないかな。」
リオンと始めて会った時も思い出した。
独りぼっちでさびしかったけど
人に会えてすごくうれしかったと思ったこと。
あの子供たちがなんにもないのに楽しそうなのは
仲間がいるからなんだ。
一緒に笑える仲間。泣ける仲間。ケンカできる仲間。
そんな人たちがいるから。
「そうだよ。大切なものって仲間なんだ。」
本当の答えかどうか分からないけどでも私の答えはこれだよ。
空に向かって麻里は叫んだ。
「今度は本当に分かったよ。大切なものって仲間でしょ。」
すると風が吹き目の前が真っ白になった。


 「うう〜ん。よく寝た〜。」
麻里は起きた。起きた場所はあの不思議な世界ではなく自分の部屋にいた。
そして目の前には白紙の作文用紙と鉛筆がある。
「あれは夢だったのかな。でも夢にしては現実味があったけど。」
そして麻里は腕を伸ばした。
するとポケットからコロンときれいな石が落ちた。
そう。その石はあの子供たちからもらったものだった。
「まっいいか。そうだ!作文やらないと。」
麻里は作文を書き始めた。大切なものの答えはもちろん仲間だ。
「え〜と。私が大切なものは・・・」
麻里の場合は大切なもの=仲間 だった。
しかしその答えは人によって違う。
性格と同じようにこの答えは一つじゃない。 
麻里はこんな世界行ったからこそ仲間だと思ったのだ。
どんな経験をしたかでこの答えは変わるだろう。
あなたも大切なものを探してみてはどうですか?
以外にその答えは近くにあるかもしれません。

END


〜 注釈 〜

ジプシーとは?
インド北西部が発祥の地といわれ6〜7世紀から
移動し始めて、今はヨーロッパ諸国、西アジア
北アフリカ、アメリカ合衆国に広く分布してる民族。
移動生活を続けるジプシーは動物の曲芸、占術、手芸品の
製作、音楽などの独特な伝統を維持する。
(広辞苑より)
この話ではかなりおかしいですが気にしないでください。
2002年7月25日


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